何度目かの『海と毒薬』
病院の待ち時間におよそ相応しくない本だと思うが、本に罪はない、当たり前だが。
私が持っているのは新潮文庫版。
読みかけだったところに、ちょうど病院行くのが重なって持っていって読み終わった。
今日は検査結果聞きに行くだけだったから診察なかったんだけど(結果は無問題、あー良かった)。
初めて読んだのが中1の頃だった。
それまで遠藤周作といえば「ぐうたらシリーズ」といった軽く面白いエッセイシリーズばっかり読んでいたのを、思い立って本屋で買ったんだと思う。
高1でまた読み直して、その時は確か夏休みの宿題で出ていた読書感想文の題材とした記憶がある。
お読みになった方はご存知のとおり、当然ながら「全米が感動!」といったストーリーではなく(我ながら貧弱な表現…)、テーマも小説の雰囲気も重い。
私の印象は毎回同じで、どのシーンも「カラー映像」のような鮮やかさはなく、白黒というよりはカラーが色褪せたような映像を見ているような感じだ。
「重い」というのにさらに補うと「だるい」という形容詞が当てはまるように思う。
ところで私は実は本を読むのがものすごく遅く、そして集中力が無いのでせっかく買ってきた本も途中まで読んで放置というのがとても多い。
だが、ごくごく一部の本は読み出すと止まらず一気に読んでしまう。
そういった本は表現、文章がスッと頭に入ってくるためだというのに最近気づいた。
文章の巧拙というのではなく(曲がりなりにも出版している本だから編集も入ってるだろうし拙いというのは無いだろう)、私にとって理解しやすいという意味で。
間違いなくこの本は私にとって一気に読める本である。読んでいてスッと入る表現だからこそ、そこで描いている情景、今回の作品は卑近な言葉でいえば「グロい」とこも含めた不気味な重い空気を感じるのだと思う。
最近の作家の作品をほとんど読まなくて、その理由は「スッと入る文章」でないことが理由のように最近思う。
私にとっては、こうしたちょっと前の作家の方がしっくりくるなというのが最近の気づき。